片恋スクランブル

「全ての事に納得していませんから」

慣れない様式に苦戦しつつ、料理を口に運ぶ。

不本意でしかない。

コンタクトに変えただけでなく、ゆるく巻かれた髪に、ピンクをベースに引かれたアイメイク。

淡い藤色の絹のワンピースは膝上10cmで、その上に羽織ったストールの手触りはとても柔らかくて暖かい。

高価な衣装は初めて袖を通すものばかりで。

7cmのハイヒールで、ここに来るまでに5回はつまづいた。

今までの自分なんて、どこにも存在しない。

ここに居るのは、御園生さんが作った人形だ。

「せっかく変身したんだから、普段と違うことをしたいと思わないか?」

御園生さんはメインの肉料理を口に運びつつ、私をチラリと見る。

「普段と違うこと?」

「普段行かない店で飯を食う」

「……望みはなかったですけど、今その真っ最中です」

「普段行かないバーで酒を飲むとか、」

「……お酒苦手なんです」

「普段気になっている男性に声をかけるとか、」

「…………」

咄嗟に返す言葉が出てこない。

「……ふぅん、望みは見付かったみたいだな」

御園生さんの、見透かすような視線が腹立たしい。

< 22 / 159 >

この作品をシェア

pagetop