御曹司は眠り姫に愛を囁く
出生の秘密
「ただいま」

私は横浜の実家に戻った。

以前から、『貴方に話しておきたいコトがあるから、今年の盆休みは絶対に帰って来て』と言われ、私はその母の言葉を守って、帰省した。

「お帰りなさい。凛音」

「お父さんは?」

「お父さんはリビングに居るわ」

玄関先で私を出迎えたのは母だけ。
テレビの朝のワイドショーで紹介されたバームクーヘンを手土産として渡した。

「これ土産」

「ありがとう」

「それよりも私に話しておきたいコトって何?お母さん」

「あ、それはね・・・」

母さんはお父さんの居るリビングに案内した。

「お父さん、凛音が帰って来たわよ・・・」

ダイニングテーブルの椅子に座って、ノートパソコンで、囲碁のゲームをしていた。

「ただいま、お父さん」

「お帰り」

元々、口数の少ない父。
最低限度の言葉しか言わず、一人で囲碁に熱中していた。


でも、父は上京すると言った私に大学時代の友人で浅見社長のようなハイスペックな人に、就職と新居の斡旋を頼んでくれた。

今住んでいるマンションの部屋は浅見社長が昔仕事部屋として使用していた。

「凛音が帰って来たことだし、三人でお茶にしましょう」




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