御曹司は眠り姫に愛を囁く
俺たちもタクシーに乗り込んで、俺の部屋に向かう。

「まぁ、ビールや酒類はあるけど・・・つまみになるのはさきいかとかお土産で貰ったビーフジャーキーぐらいしかないぞ。陸翔」

「構わない」

今、住んでいる部屋は品川の25階建てのマンション。
不動産収入に興味を持ち、試しに購入した部屋。
3年前に購入し、ずっと会社の人間に貸していた。
帰国後は俺が住んでいたが、兄貴が俺の部屋を偉く気に入り、譲るコトになった。
タワマンが林立しているエリアだけに、俺のマンションの低層は目立つが、生活環境や交通の便はいい。

兄貴は子育てしやすいエリアだと噂を訊き、二人目も生まれるので、子育て環境を考えて、引っ越しを決意。

タワマンの不便さがSNSで知られるようになり、マンションの査定価格も跳ね上がっていた。

身内にタダで譲るのは少々勿体ないと感じていた。

兄貴にそう言えば、ケチ臭いヤツと揶揄されるのは目に見えている。

兄貴は国会議員で、人前で話すのは慣れている。

口では勝てないから、何も言えない。






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