御曹司は眠り姫に愛を囁く
「三原さんからのお土産です」と私は立ち上がって、他の皆にもお土産を配り歩いた。

きっと、社長室では椎名さんの部屋のリフォームの件を三人で話しているだろう。

私と須藤さんが受けた話だけど。

私達二人ではなく、須藤さんと三原さんが担当すると思う。

だって、相手は名家の椎名家だから・・・


三原さんと須藤さんが一緒に社長室を出て来た。

私は配り終え余ったお土産を三原さんのデスクの上に置いた。

「ゴメンね。貴崎さん」

「いえ」

「貴方も忙しいのに・・・」

「三原さんほどではありませんよ」

「須藤さんから訊くところによると、昨日の仕事は貴方と須藤さんが受けた仕事だってんでしょ?」

「あ、はい・・・」

「失敗の許されない相手ね・・・私と須藤さんで担当するようにと浅見さんの命令だから・・・貴方は外れてね・・・」

私の椎名さんの件はノータッチとなった。
最初から、できないと思っていたから好都合だった。

自分の想いに気づいた私に、椎名さんと奥様の住む部屋のリフォームなんて無理だ。
携わると嫌でも、奥様と顔を合わせてしまうから。



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