政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています
きっとアン王女と男性は結ばれないのだろう。
一時の楽しい夢のように、私のこの時間も、やがて終わってしまう。
そもそも、これはデートなんかじゃなくて、彼は私のワガママにつきあってくれただけだ。
時計の音がする。
誰かの腕時計が、規則正しく時を刻んでいく。
タクシーが進むごとに、夢みたいだった時間がどんどん遠ざかって、現実が近づいてくる。
しばらく行ったところで、私たちを乗せた車は停まった。
ドアの外に降り立つと、見覚えのある景色が外灯に照らされている。
「そこの角を曲がるとすぐホテルだよ。ひとりで戻れる?」
黙ったまま私がうなずくと、彼は優しく微笑んだ。
「いい子だね」