神様には成れない。



彼は私がまた、パスケースにカードキーを仕舞うのを見届けると、何てことはないように手を取り歩き出す。

私はと言えばやはり、ここに来るまでもそうしていたけれど、それにすぐさま慣れるわけでもないので少しだけ身構えてしまう。

意味を持ってしまっているのでドギマギするのだ。


「そっ、そう言えば淵くん何で今日はこの周辺に居たの?」


落ち着かない気持ちを誤魔化すように話題を振る。

これも気にはなっていた事だ。

この場所は彼が住んでいる場所よりも、私が住んでいる場所の方が近いのだ。

突然呼び出したけれど、何か用事で来ていたのではないだろうか。


「大学で使う本探しに来てたんだけど……瀬戸さんにこっちまで来させてごめんね」

「ううん。それは全然いいんだけど。うちから近かったし」


京ちゃんの家と淵くんの家は近いのだが、どちらにせよ私は一度彼に返す物を家に取りに帰らなければならなかったので結果的に良かったのだ。


「本……は無かったの?」


男の子はよくポケットに必要最低限の物を入れているのを見かけるので、彼もまたそうなのだろう。

彼が手に持っているのは、私が返した物だけで鞄等は持っていなかった。


「なかったから取り寄せて貰ってる所」

「他に用事とかなかったの?」

「別になかったけど。本も暇つぶし程度に買いに来てただけだし。……それより、自分が乗るホームに向かってたけど瀬戸さんどの電車だっけ」

「あ、途中までそっちに向かうから同じ電車乗るつもりだよ」


と言えば首を傾げた。


「瀬戸さんこそ用事?」



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