【BL】祭囃子
花火とキミと、恋心。


毎年八月最後の土日は近所の神社で祭りが行われる。
花火も上がるそこそこな規模のお祭りで、この街では大イベントの一つとなっている。


花火が上がる日曜日の夜は最も人が集まるのだが、そんな中で俺は神社の石段の下でかれこれ二十分ほどヒトを待っている。


「全く、アイツは……」


呆れて溜め息を吐いたとき、ちょうど向こうから駆けてくる影が見えた。


「悟(サトル)ー!ごめんねー!」



遠くからでも分かる白い髪。
それに負けないぐらい白い肌。
それを映えさせるグレーの浴衣。


「えへへ、待った?」
「壱(イチ)、待った?じゃないだろ!どうしてお前は毎年毎年遅刻してくるんだ!」


俺のそばで足を止めるのを見計らって、額を指先で弾いてやった。


「痛っ………ごめんってば。ほら、浴衣って着るのに時間かかるからさ。悟は今年黒の浴衣なんだね。目と髪の色と同じだ。」
「……そう言うお前は、またその色なんだな。」
「うん、ダメ?」
「いや、よく似合ってるけど。」


壱が着る浴衣の色は決まってグレー。
これは出会った十二年前から変わらない。



実際似合っているのだから問題はないが、もう少し遊び心を入れてもいいのではと思う。


「ありがとう。遅れてごめんね、早く行こう。」


祭の屋台へと足を進めた壱の背中を追う。



十九の夏、ーー十代最後の夏が終わる。

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