Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 「っ、千紗子?」

 自分の腕の中に閉じ込めている千紗子が、自ら抱きついてきたことに、一彰は驚きを隠せない。

 千紗子はそんな一彰の体に抱きついたまま、顔を上げてしっかりと彼を見つめると、口を開いた。

 「そんなふうに妬いてもらえてるなんて知りませんでした…嬉しい。」

 一彰が目を見張る。

 「私だって、いつも妬いてます。一彰さんが素敵でモテるのは前から分かっていたことだけど、こうして恋人になったら、そのモテる様子をはたで見ていると、どうしようもなく嫉妬してしまいます。」

 言いながら何となく思い出して、少しむくれてしまう千紗子の頬に、柔らかな物が押し当てられる。
 ちゅっという音を立てて離れたあと、千紗子を抱きしめている腕に、きゅっと力が込められる。

 「俺はちぃのことしか見てないよ?他の人にモテても全然嬉しくない。」

 千紗子は一彰の背中の服をキュッと握って、その胸に顔を押し付ける。
 息を吸い込むと、華やかな甘みのある爽やかな香りが鼻から抜けて、千紗子の胸がきゅんと甘く疼く。

 「分かってる…つもりです…でも、いやなものはいやなんだもん。」

 駄々をこねる子どもみたいな口調になってしまった千紗子に、クスッと笑った一彰は、彼女のつむじに唇を落とした。
< 260 / 318 >

この作品をシェア

pagetop