Sweet Healing～真摯な上司の、その唇に癒されて～

　その瞬間を狙ったかのように、熱い舌が千紗子の唇を割って入って来た。

　「ふぁっ…」

　初めて千紗子の口からうめき声以外の音が漏れた。

　さっきまで労わるように優しく動いていた舌は、今は彼女の口内を蹂躙する獣のように荒々しく動き回る。

　「んあっっ…んんんっっ……ふっっ」

　激しい動きに、息が苦しくなって、さっきまでとは違う意涙が浮かんでくる。

　その口づけは、ただ荒々しいだけでなく、まるで千紗子のすべてを知っているかのように、彼女が敏感に反応するところを刺激した。

　閉じた瞳からは涙が溢れ続ける。
　それが精神的痛みからなのか、それとも肉体的な辛さからなのか、彼女には分からない。

　「目を開けて。ちゃんと俺を見て。」
　
　少し離された唇が口づけの合間に囁く。
　千紗子は言われるがまま、泣いて重たくなった瞼を持ち上げて、目の前の男性を見上げた。

　「今は何も考えなくていい…だけど、俺のことをその瞳にしっかりと映しておいて。」

　彼は千紗子の瞳の端に口づけると、そこから溢れ出る涙を吸い取った。