命の記憶
「で、できるの?」


 私の問いにその子は何も答えず、代わりにすぐそばにあった鉄棒につかまり、くるんと一回転。


 綺麗な逆上がりを見せてくれた。


「わあ! すごい!」


 私はすぐにその子の近くに駆け寄った。


「私もそんなに綺麗に逆上がりできるようになる?」


「もちろん!」


 その子が笑顔でそう言ってくれたおかげで、私はなんだか自信が出てきた。


「あら、お友達?」


 お母さんが電話を終わらせて帰ってきた。


「うん! 今仲良くなったの!」


「ならお友達と仲良くしていられる? お母さん急に仕事が入っちゃって……夕方までにはお迎えに来るから、それまでいい子でいられる?」


 せっかくお泊まりに来たのにお母さんはお仕事だ。


「うん、わかった」


「ごめんね、いってくるね」


 私はお母さんが見えなくなるまで見送った。
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