俺たちは夜に舞う蝶らしい

『それで、仕事というのは?』


「KINGの動向はどうなってる?
それを調べて欲しい。」


『それは、夕さんの方がいいのでは?』


「出てこなかったんだよ。」





夕さんは組の中でもトップクラスのハッカー。
俺に、ハッキングを教えてくれたのも夕さんだ。

犯罪?
んー、そうなんだけどね。

ま、良い子は真似するなってやつだよ。

‥‥っていうかさ。





『夕さんで無理なら、俺なんて不可能ですよ。』





俺に技術を教えた本人が無理なのに、弟子である俺が出来るわけねぇじゃん。

何考えてんのこの人。





「お前、俺より技術あるの気がついてねぇの?」


『へ?』


「俺は確かにお前にやり方は教えたがな。
基礎しか教えてねぇし、後はお前の我流だぞ?」


『え?』


「お前はもう俺より技術があるし、実力も上なんだよ。」





気づいてなかったのかよ。とおもしろそうに笑う夕さん。

自分より優れた能力だと他人を認めるのは、簡単なことじゃない。

俺なら認められないだろうし、認めたくない。

けど、夕さんは自分の立場や力量を把握した上で動く。
だからこそ、強いんだ。

力もだけど、心が。




< 26 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop