24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~

 ――22時過ぎ。立花がやってきたのは、星付きのホテルだった。


(ホテルって……)

 繁華街にあるラブホテルではないだけいいかもしれないが、ホテルであることには変わりない。
 伊鈴は幾分か身構え、繋がれていた手をパッと放した。


「上階に、バーラウンジがあるんです。23時半がラストオーダーなので、その時間までにはお店を出ましょう」

 立花が歩きだすと、必然的に雨に濡れる。伊鈴は反射的に一歩踏み出し、傘に入ってしまった。


「あいにくこの天気なので、綺麗な夜景が見れるかわかりませんが、それも一興です。気分転換になりますよ、きっと」

(立花さんは泣いている私を放っておけないだけ。老舗の五代目だもの、間違ったことはしないはず)

 やっぱり帰る、と言いそびれてしまい、立花の優しさに甘えたい気持ちが大きくなった伊鈴は、自分を正当化するような考えを頭の中で繰り広げた。

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