天満つる明けの明星を君に【完】
戻って来たら、雛菊に告白しようと決めていた。

だがあれから雛菊は黙り込んでしまい、後片付けを手伝っている間もずっと話しかけることができなかった天満は、風呂に入って食事をしたことで、どっと疲れが出て居間に寝転んでいた。


「朔兄に文を書かないと…。ああでも…眠たいなあ…」


ここに息吹が居たならば、ちゃんと布団で寝なさいと怒られるところだが、ひとり暮らしをはじめて気ままに生活していた天満は、雪がちらほら降っている庭を見ながらうとうとしていた。


――後片付けを終えてひとりで風呂にも入れるようになった雛菊は、風呂から上がった後居間で眠り込んでしまった天満の傍に座って顔を覗き込んだ。

…ぐっすり寝ている。

詳しく語ってはくれなかったが、集団に襲われたと言っていた。

怪我をしているようには見えなかったが、天満が強いことは十分知っていたにも関わらず、心配になった雛菊はさわさわと天満の腕や首に触れて怪我をしていないか見ていた。


――妖には人と同じように戸籍がある。

鬼陸奥を管理している古老に駿河の悪行と死んだことを伝えれば…戸籍は抜いてもらえる。

そうしなければ天満に想いを伝えることもできない。


「私のために……ありがとう」


さらさらの髪に触れると、熟睡していた天満がぎゅっと手を握ってきた。

愛しさが溢れてきて、そっと顔を寄せて――その頬に口付けをした。


嫁に貰ってくれとは言わない。

言わないが、想いを伝えて、気持ちをすっきりさせることはできる。

後は自分が努力して、自立できるようになれば――何も問題はない。


「私がしっかりしないと」


宿屋をやるのも、いいかもしれない。

駿河の実家で培った事務仕事は全て覚えているし、朔に頼んであの空になった宿屋でやり直すのが一番いいかもしれない。


「忙しくなりそう」


少し心が晴れて、また天満の頬に口付けをした。
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