天満つる明けの明星を君に【完】

家族の温もり

鬼頭家の直系の子は、代々一人っ子だった。

ふたり居たことはなく、三人居るなんて論外だ。

その呪いを打ち破ったのは父であり、母だった。


ひとり目ができた。

ふたり目ができた時は――呪いが解けたと誰もが喜んだらしい。

三人目ができた時は、もう我が家は一人っ子で悩むことはないとあまり笑わない父が笑って、家族揃って同じ部屋で床を並べて寝た。


だから僕も――

僕もきっといつか家族ができた時に、大家族になることが夢で、頑張ろうって思ったんだ。


「天満(てんま)」


「あ、朔(さく)兄お帰りなさい。どうかしたんですか?暁(あかつき)ならすやすや寝てますよ」


朝方、我が家の生業である百鬼夜行から戻って来た当主の朔は、さらさらの前髪を耳にかけて、縁側で朔の子である暁を抱いていた天満の隣に座った。


「首が座ってからいっときも目が離せなくなりました。もうはいはいもできるなんて、成長が速いなあ」


「暁は俺の子のはずなんだが、お前にべったりだから時々妬ける」


「ははは。朔兄、この子が次代の当主なんですよね?百鬼夜行…女の当主ははじめてなんですよね?」


朔は風呂上がりで濡れた髪を手拭いで拭きながら頷くと、柔和でいていかにも優しげな天満の頭を撫でて暁を覗き込んだ。


「初の女の当主だ。今、芙蓉(ふよう)と過去の当主が書いてきた文献を読んでいるんだが…例がないからちょっと心配ではあるな」


「いいないいなー。僕も見てみたい!百鬼夜行を始めた当主の代の文献とか見たい!当主しか見れないんですよね?芙蓉さんはいいなあ」


朔は壮絶な美貌にふっと笑みを履いて、目を伏せた。


「…芙蓉は泣いてばかりだが」


「え?」


「なんでもない。いずれ暁は過去の文献を見ることになる。その時覚悟を決めて、人と妖の懸け橋となるのだと誓ってくれると俺は信じている」


「はい。僕も及ばずながらお手伝いさせて頂きます」


――兄の力となれることが嬉しい。

天満はぱちっと目を開けた暁の頬をちょんと突いて笑いかけた。


「父様が戻って来たよ。あとお乳の時間ですよー」


暁が朗らかな声を上げた。

天満は目を細めて愛しげに暁の髪を撫でた。
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