略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
*


 匠海のマンションに戻るなり、ふたりは脱力したようにソファに腰を下ろした。


「結局、俺たちのこと認めてもらう話、してないな」

「すみません、私が勝手に口走っちゃったから……」

「いいや、大丈夫だよ。また話に行けばいい。じいさんもまた将棋の相手して欲しそうだったしな」

「匠海さんが手加減しないからですよ」

「するわけないだろ。勝負はいつでも全力で行かないと」

「大人げないってそういうところなんですね」

「捉え方の問題だよ」


 くすくすと笑い合うと、匠海はそっと美郷の肩を抱き寄せた。

 自然と視線を交わし、目を閉じるのも同じタイミングだ。

 薄く開いた口唇を傾けて重ねると、匠海はもっと強く美郷の身体を抱きしめた。

 もしかしたら、この甘いひとときは長くは続かないかもしれない。

 あと一年。

 陽翔の業績向上が無事に遂行できたあと、予定通り、結婚することになるのかもしれない。

 陽翔の言っていたように、籍は入れても、お互いに想い合う人と別々に過ごす夫婦になるのも、ない話ではないのかもしれないと思っていた。
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