略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「なっ、な、なにして……っ!?」


 触れられた部分が、火傷しそうに熱い。

 そこから全身へと熱くたぎった血流が送られ、のぼせてしまいそうに眩暈がした。

 咄嗟に口唇の感触を残す耳を押さえて、ぐるぐると回転する視界に匠海を捉える。


「耳へのキスは“誘惑”。そのままの意味だよ。
 まずは男として意識してもらわなきゃ、何も始まらない」


 耳を押さえる美郷の手を取り上げ、腰を屈めたまま今度は手の甲にキスをする匠海。


「たっ、匠海さん……っ!?」

「これは“敬愛”。
 ……好きだよ、美郷」


 同じ目線に合わせられた琥珀の瞳。

 眼鏡を介さず、今までとは全く違う眼差しで美郷を見つめてくる。


「早く俺を好きになって」


 業務中に言われる言葉が、いかに気軽なものだったかがわかる。

 心臓ごと心を掴みに来るような、赤裸々でしたたかな想いが美郷に襲いかかってくる。

 無理だ。

 こんなにダイレクトに想いをぶつけられて、平静を保てる人間なんていない。
< 31 / 241 >

この作品をシェア

pagetop