略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

 長いコールが何度か続いたあとで、ピロンとメッセージの受信音が鳴る。

 突然電話を切った美郷の心配をしてくれているとわかる。

 美郷もまた、匠海のことをよくわかっていると気づき、胸が高鳴った。

 我ながらとても失礼なことをしてると思う。

 だけど、だめだ。

 自分は婚約をしている身。

 婚約相手以外の人と必要以上に親しくしてはいけないのだ。

 ……今日見た、陽翔のようには。

 メッセージに何が書かれているのか確かめることなく、スマホの電源を落として布団に潜り込んだ。

 真っ暗で静かな部屋なのに、耳元にはまだ匠海の柔らかな声音が聴こえてくるようだ。


 ――――『美郷ちゃん』


 記憶の中の声だけなのに、鼓動が急かされる。

 優しく慰めてもらいたいと思いつつ、それはあってはいけないことだと固く瞑る目元から滲み出す涙を堪えて、無理矢理一日を終えた。



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