略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

「乙成さんのこと、借りていっていいかな」

「どうぞどうぞ、攫うなり奪うなり好きにしてやってくださいっ」


 匠海へと振り向けない美郷の前で、理子はきらきらとした笑顔で勝手なことを宣った。


「ちょ、理子ちゃん……っ」

「ありがとう。今度うちの若い奴らとの合コン、セッティングしとくから」

「きゃぁっ、ほんとですかぁ! ありがとうございますぅ!
 じゃあ、結城部長もそのときは――」

「俺は、美郷がいないところには行かないことにしてるから」


 ……は!!??


 匠海が初めて、美郷以外の前で名前を呼び捨てる。

 さらに、明らかに親密な関係を匂わせるような口ぶりに、美郷は顔と心臓をぼふんと爆発させた。

 まんまと理子は驚き、興奮を隠せない様子で匠海と美郷を見比べてから詰め寄る。


「み、み、『美郷』呼び!!!! ちょっと先輩っ、どおいうことなんですかぁ!?」

「こ、これは、違くて……っ」


 ぶんぶんと両掌を理子の前で振りまくって、匠海の口から飛び出たものを取り消そうとする。

 当然、すでに理子の耳に入ってしまった呼称は消えるはずがない。
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