届け、響け、繋がれ
駆け出した。

好き嘘だって言われた時に湧いた怒りも


映画に純粋な先輩に汚い隠してた私のドロドロした感情を浴びせてしまった後悔も


言葉を大切にしてた人が、言葉を馬鹿にしてた喪失感も



全部全部無くしてしまいたかった。




次の日、先輩が渡米する日。

私はサークルのスクリーンを見つめていた。

ふと思いたって、2人で作った映画を手に取った。

NGシーンとか、切れっ端とかをぼーっと眺める。



『あっちょ!水かかったじゃないですか』



『フハッ!彩葉べっちょべちょ』



海で撮影した時も、



『先輩、アイスいります?ってカメラ回さないで下さい』



『いいじゃん、アイスと女子大生。』



『馬鹿にしてます?』



木陰で涼んでいた時も


2人はずっと笑ってた。

キラキラした笑顔でまるで2人だけの世界があるみたいで。


全部見終わって、真っ白なスクリーン。

何も映ってないのに、私の目には確かに先輩の笑顔とか怒った顔とか意地悪したあとの満足気な顔が再生されているように映る。



先輩、ごめんなさい。
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