王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


 その女性は、ニーディ村で薬師を営むエミリーだ。職務の一環で事情聴取に出向いたのが、出会いの切欠。

 エミリーは頭脳明晰で思慮深く、心優しい。華美に装わず、質素な木綿のワンピースを身に纏っただけの姿は、慎ましやかで美しく、清らかな女神のよう。

 囁きは優しく、嫋やかな手は慈しみに溢れ、その微笑みは聖母を思わせる。

 ……あぁ、これはもう女神のよう、ではない。女神とはまさに、エミリーの代名詞。

「……フレデリック殿下、明らかに『女神』の意味を取り違えておりましてよ」

 ん? どうやら俺の心の声は、実際の声となっていたらしい。

 向かいに視線をやれば、アイリーンが白い目で俺を見ていた。



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