王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


 馬乗りになった女性の膝が鳩尾にめり込む。自由の利く腕でなんとか押しやろうとするけれど、女性は私の抵抗など歯牙にもかけずに、両手で首を鷲掴んだ。

「ッッ!!」

 容赦のない力だった。一切の迷いも、躊躇もなかった。

 そこにはただ、明確な殺意だけがある。
 
 喉が、焼け付くようだった。

 打たれた足が、燃えるように熱いと思っていた。けれど、喉の熱はそこだけに止まらない。血流と呼気を堰き止められて起こった熱は、頭を焼く。私の思考を、真っ白に焼き尽くす。

 遠のく意識の中で、何故か思い浮んだのはフレデリック様だった。
 親友のアイリーンでも、大好きだった祖父母でもなかった事に、私自身驚いていた。

「エミリーっ!!」

 ……あぁ、姿だけじゃない。最期に声まで聞かせてくれるなんて、神様はなかなかに慈悲深い。

 そんな感情を持ったのを最後に、私の意識は途切れた。








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