王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


「なに、儂もじゃよ。巷じゃ、治療師や薬師を語る名ばかりの怪しい者どもが溢れておる。まぁ、フレデリック坊ちゃんならば、間違ってもその者らに処置を頼む事はなかったじゃろうが。とにかく、儂が処置できてよかった。儂もまた傷の状態を診にくる。抜糸は傷の治りをみて考えよう」

「マキロン、どうかよろしく頼む」
「なに、お安い御用じゃ」

 マキロンは力強く頷いて答え、俺の屋敷を後にした。俺は玄関先まで出ていって、マキロンを見送った。マキロンの背中が小さくなっていくのを見つめながら、俺はエミリーの為にしてやれる事を考えていた。

 屋敷には、余裕をもった人数の使用人を置いている。けれど俺は、その中からエミリーの看護にあてる人員を選ぶつもりはなかった。

 当家の使用人がエミリーを粗略に扱うとは欠片も思っていないが、俺が俺自身の手で、誰よりも丁寧な看護をしてやりたいと思った。





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