王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


 弾かれるように見上げれば、フレデリック様の真摯な水色の双眸が目に飛び込んだ。

 けれど私は、答える事が出来なかった。いや、答えるべき言葉が、見つからなかった。

 固まる私に、フレデリック様は寂し気にひとつ微笑むと席を立った。

「茶と蜂の子を馳走になった」

 そのままフレデリック様は、すたすたと扉に向かう。私も慌てて席を立つと、フレデリック様の背中を追った。

 フレデリック様は私が追いつくよりも前に、自らの手で扉を引き開けると、私を振り返った。

「また来る」

 っ!!
 その一言を残し、フレデリック様はそぼふる雨の中を颯爽と駆けていった。フレデリック様の姿は、あっと言う間にけぶる雨に隠されて、見えなくなった。

 一人残された私の心もまた、あらゆる感情でけぶり、先を見通す事が出来なかった。



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