王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


 ……あらあら。私は向かいから弧を描いて飛んできて、鼻頭にくっついた米っ粒を、おもむろに布巾で拭う。

「ご、ごめんなさいエミリー! 少し、驚いちゃってっ!」

 フレデリック様にも出して随分と量を減らしたが、やはり生で食べきるには日数的な問題もあり、私は蜂の子の残りを保存のきく佃煮に調理したのだ。

 艶やかな照り色となった蜂の子はひとっ縮みになって嵩を減らし、パッと見にはイカナゴやシラスなんかの小魚のようだ。

「そう! これが、蜂の子。蜂の子っ……」

 明らかにアイリーンの声が、裏返っている。輝くエメラルドの瞳には、薄く涙が滲む。

「……なんか、ごめん」

 美貌のアイリーンの潤む瞳は、同性の私の胸にもグッときた。

 別に悪い事をした訳ではないのだが、勝手に口から謝罪が漏れ出ていた。

 ただし繰り返す。我が家にあって、蜂の子の佃煮と特盛の白米は、ご馳走もご馳走だ。



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