王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


 もたらされた言葉は、私が望んだ慰めの言葉じゃなかった。けれどそれは、母の心の内側に触れる言葉だった。

 ……母はきっと、寂しかった。
 その寂しさを埋めたくて、安易な思いで手近な温もりに縋った。けれどその代償は、不義の子という母にとってあまりにも大きいものとなった。

 同じ女として、僅かに同情した。けれどそれ以上に、ふつふつとした怒りが私を焼き尽くしそうだった。

 ……甘えるな! 寂しさを埋めるのに、男の温もりを求めるな!!
 母の心の弱さが私の目に、とても忌まわしい物として映った。同時に、私は絶対に母のようにはなるまいと、心に誓った。

 私の人生は、私だけの物。男に顧みられぬからと、別の男の温もりに縋る生き方だけは絶対にするまい。

 母への反骨じゃない。強がりでもない。
 私はただ、そうありたかった。

「お母さん、私、ここを出る。もし承知してもらえなければ、家の事、全部世間に暴露する。私は、本気だよ」



< 81 / 284 >

この作品をシェア

pagetop