王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


 十センチというのは、存外狭い。来訪者の顔はまだ、見えなかった。見えたのは靴の先と広い肩からはためくマントだけ。

 だけどその雰囲気や纏う空気感、大凡の体格などから、私は来訪者を確信していた。

 そうして気付いた時には、本能が勝手に信号を出し、キャッチした右手が即座に扉を閉めていた。

「おいエミリー!? 何故締め出す!?」
 
 そうすれば案の定、扉の外から不満げな声が上がる。声の主は当然、フレデリック様その人だ。

 ……そりゃまぁ、そうなるよね。
 なによりこの態度は、流石に失礼にも程がある。

 私は気を取り直し、再びドアハンドルに手を掛けた。


 キィィィイイ――。


 そうして今度こそ、全開まで開け放った。



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