MAN of DESTINY王太子の執拗な求愛
🐝⋆゜

勢い良く、レイモンドの金色の
西洋剣がエミリア向けて投げられた。

黒く鋭くレイモンドの目は
つり上がり口は白い歯が
むき出しになるほど強く開き、

まるで前世の記憶の苦しみと美桜の
敵討ちを、一つの剣が請け負ったように‥

真っ直ぐに、確実に化け物を狙って飛んだ。


エミリアを捕らえ、金の剣は化け物の背中から、

««グサリ»»
と刺さった。
 
  ウギヤーアアアアアアアア

赤く血走ったワニの目が更に開き、
口からは、真っ黒な
ドロリとした血が噴き出した。

エミリアの悲鳴が上がると、
建物のどこかしこから

 《《《《ギエーエエーエー》》

気持ち悪い悲鳴が飛び交っている。


エミリアはあの美貌も、
エレガントなしぐさも、
見事なくらい夢のように消えていた。
ただ醜さだけが支配していた。

容姿も心も見る陰はない。

ギロリと大きく血走った目を開き

とがった、枝きりバサミのような
爪をした手で剣を抜き取ろうとした。


金色の剣は、
化け物の血で黒く錆びたような色になり、エミリアの体に溶けて行った。

化け物になったエミリアは顔も身体も細く伸びバタンバタンと
大きく揺れながら高くとびあがった。

最後黒い髑髏になりボボーオーウンと地響きに似た音を出して
真っ黒な塊になり空へ空へと
再び昇っていった。

昇りつめた赤い空から地響きのような爆発音を響かせ、黒い鉄の塊は、下へ下へと凄いスピードで落ち、串刺しのまま地に突き刺さり、ぽろぽろと錆びた粉になった。

最後には砂埃と化し竜巻のように回ると
そのまま消えて行った。

エミリアの最後を見届けたように
虹の光は円を描きながら町へ
向かって下りだした。


レインボーな光はルチアマンダ国
全体に広がり
ウギャ━━━
グワァア━━━━━
ギャャャャ━━━━━”
沢山の悲鳴は爆発音のように
響いた!

どれくらいの時がたったのだろう
長い様で、一瞬のようでも合った。

壮絶な戦いだった事を
証明するように街は煙が上がり、
どこそこに壊れた家々の残骸が
あった。

街は酷い有様だった。


異様なくらい、赤過ぎた空は
やがて青い空に
ゆっくりと時間をかけて戻って
行った。

土ぼこりと血がにじんだ
レイモンドの身体も手当てを
受けないといけないがずっとずっと
美桜から離れずにいた。


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