十日月夜のおとぎ話
――夢を見た。


あたしは誰かに両手首を紐のようなもので縛られている。


目の前に“誰か”がいるのはわかる。


だけど薄暗い部屋の中で、あたしは彼の顔を確認することもできない。



彼は暗闇の中、両手であたしの頬を包み込むと、そのままそっと口づけた。


自由の利かないあたしは、なす術もなく彼の唇を受け入れるしかない。


彼の唇は次第にその位置を変えていき、あたしの首筋から胸へと移動する。


彼の熱い舌の感触が、あたしの体をくすぐる。


何も見えないから、余計に神経が研ぎ澄まされ、あたしはその快楽に溺れそうになる。




夢の中なのに、あたしは妙に冷静で

――ああ、こんな夢見ちゃうなんて、ノゾムとのヘンな会話のせいだな……


なんて納得したりしてる。



だとしたら、彼はノゾムなのかな……?


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