Chinese lantern
 同時に散々ソラが口にしてきた己を想う言葉が蘇る。

---あ、あんなことを昔の姿で言われたら……---

 想像しただけで、かーっと顔が熱くなり、汗が噴き出すようだ。

「ちょっと輝血、大丈夫なの? あーっ! 昔はともかく、今はこんな風になっても輝血を抱き上げて運ぶこともできないよーっ」

 心底悔しそうに、ソラが目の前で頭を掻きむしる。

「ふふふ、ソラよ。今そんなことをしてごらん。輝血は鼻から血を噴いて、気を失おうぞ」

 主様がにやにやしつつ、渡殿から言う。

「えっ! そんなに重症なの」

 意味が分からず、ソラはがばっと輝血を覗き込んだ。
 その幼い顔を、じ、と見、ようやく気分を落ち着けて、輝血は立ち上がった。

 とりあえず、いつまでもこの池の傍にいるからいけないのだ。
 離れてしまえば、ソラの昔の姿を見ることもない。

 よろよろと歩く輝血の横を、小さなソラがちょこちょこついてくる。
 が、渡殿の前で、思い出したようにソラは身を翻した。

 たたた、と走っていき、すぐに戻ってくる。
 その手には、蛇いちご。

「お前はまた、そんなものを……」

 輝血が渋い顔で言うと、ソラは少し口を尖らせた。

「だって蛇いちごって蛇の食べるいちごなんだよ。輝血が好きかと思って」

「わっちは蛇じゃねぇよ」

「蛇だってそんなもん食わんわい」

 輝血に被せて、主様も顔をしかめる。

「でも形はまぁ可愛いから、飾っておく」

 そう言って、にゅ、と手を出すと、ぱっとソラの顔が輝いた。
 そして嬉しそうに蛇いちごを輝血の手に渡した。

 こんなやり取りを、あとどれぐらいできるだろうか。
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