恋人未満のこじらせ愛
いつもここからは、少し離れたJRの駅から帰ることにしている。
乗り換えをするよりも早いことと、途中に美味しいパン屋さんを見つけたからだ。

クロワッサンとシンプルな塩パンがお気に入り。それに惣菜パンをいくつかトレーに乗せる。
そして六枚切りの食パンも。
食パンは明日からの一週間分の朝食になるのだ。


買い物を終えると、パン屋の買い物にしては少し大きな袋を抱えて電車に乗る。
じりじりと照りつける日差しとは正反対で、車内はひんやりと涼しい。
朝のラッシュとは無縁の電車に乗って、私は家路につく。


家は駅から徒歩十分。普通のアパートの一階。
女性はセキュリティを気にして一階を嫌がると聞くが、私にしてみれば階段を上がる方がよっぽどめんどくさい。
そんな性分。


「ただいま」
誰も居ないけれどそう呟き、玄関のドアを開ける。
部屋の間取りは普通の1K。
私はキッチンを駆け足で横切り、一目散にエアコンのスイッチを入れる。
そして化粧を落としパジャマに着替えると、買ってきたパンに手をつける。


これが土曜日の朝の、習慣だ。

いつもパンを食べながら、昨日のこと─金曜日の夜のこと を思い出す。

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