恋人未満のこじらせ愛
「私さぁ、総務の女子から何て言われたと思う?
『院卒エリートを手篭めにした年増女』って!確かに二歳上だけど!」

伊藤さんは怒りをあらわにして叫ぶ。
まあまぁ落ち着いて、と江浪さんがなだめている。

そう、江浪さんは超エリート軍団の一人で、狙ってる女子は沢山いたという噂。
だが当の江浪さんは、入社当初から教育係りの伊藤さんに一目惚れで、ようやく結婚にこぎ着けた…という話だ。
(当時二人はマーケティング部だったんだそう)

「でも伊藤さん……どう見ても私と同じぐらいに見えますよ…?」

「あら菅原さん嬉しい」

そう上機嫌で焼き鳥を頬張る伊藤さん。
行動は豪快ではあるが─小柄でふわっとしたボブカットに薄い化粧で十分なくっきりした目。
下手すれば私より年下に見えるほど、童顔だ。


「だって私も内定式で沙絵を見たとき『高校生…いや中学生?!』って思ったもん。二歳下で二十歳だって言われてもピンと来なかったよ」

「ひどいよハルさん!!うち高卒取ってないし!!」

ちなみに伊藤さんは佐々木さんのことをハルさんと呼んでいる。


「まぁ沙絵、仕方ないよ。女子って生き物は羨ましく思うほど憎んでくるからねー。
私も育休から復帰する時『時短じゃないの?』って散々聞かれてさぁー。
『自分の親と同居してるから』って言うともう一気に子持ちを敵に回したよね」

つまり……女子はめんどくさい生き物、らしい。
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