三途の川のお茶屋さん



「人の屋敷の敷地に許可なく侵入するとは、一体どういう了見か?」

気配を読んでまず、まさかと疑った。けれど何度神経を研ぎ澄まして透かし見ても、気配は間違いようがなく……。

「出て来られませ、太一様?」

侵入者は俺にとって、あまりに意外な人物。

「……ほう、分かっているなら話は早い」

太一様は天界の良識者とも称えられる、天界の最長老だ。

神威様の先代が大天神であった時代から、天界第二位の権天神としておわし、長きに渡りあまねく輪廻転生を見守ってきた天界の功労者でもある。

「十夜、其方が匿う女神を我に渡せ。其方のような若輩が女神と番おうなど百年早いわ」

予想の上をいく重鎮の登場に、俺は僅かに動揺していた。



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