三途の川のお茶屋さん
いつもと同じソファの左端に腰掛ければ、すぐに微睡みが私を包み込んだ。そこで私は、何年振りかに悟志さんに逢っていた。
悟志さんは私の知る悟志さんじゃなく、還暦を迎えた老爺の姿になっていた。
だけど私に向ける穏やかな微笑みは生前に知る悟志さんとなんら変わりなかった。
私達はただ静かな笑みを交わした。そうして瞬きをした次の瞬間には、悟志さんの姿は朝霧に消えていた。
「悟志さん、どうか安らかに……」
カタンッ。
物音で振り返れば、居間の扉の前に十夜が立っていた。
「……十夜!」
「幸子、ソファで夜明かししては疲れが取れんぞ?」
十夜は大股でソファに歩み寄ると、私の隣、定位置の右側にドサリと腰掛ける。
「全く人にはベッドで寝ろと言っておいて、自分はソファで夜を明かすとはいい度胸だ」