三途の川のお茶屋さん
「……私の思いは変わりません。この目に再び悟志さんを見るまで、私はここから動きません」
けれど女は、震える声ではっきりと言い切った。
女は、目に溜まる美しい煌きを零さない。
「ああそうかよ。勝手にしろ。どうせ三十年、もつとは思えん。乗りたくなったらいつでも船に乗れ」
凛として、美しい女。醜態を晒した俺は、これ以上女の前にいる事が憚られた。
無様な俺は捨て台詞を残し、女の前から逃げた。
「……俺は、何をやっているんだよ」
けれど途中で、思い直して足を止めた。
「クソッ!」
俺は女の元に、踵を返した。
こうして、俺と幸子の同居生活は幕を開けた。