三途の川のお茶屋さん
「そうか! 煮魚は美味いから嫌いじゃないぞ」
そう、十夜は骨と皮で、ちょっと食べるのに難儀しているだけなのだ。
「幸子、ご飯は大盛りだぞ」
……そうか。そこまで好きだったとは、ちょっと意外だ。
「分かりました。煮魚も、多めに用意してありますからね」
「そうか!」
十夜と私の日常は、これを境に少しその密度と温度を高く変えた。
けれど不思議と私達の関係には、なんの約束も展開もなかった。
劇的な変化とならなかった事に私は首を傾げつつも、十夜と過ごす一日一日が、かけがえなく愛おしかった。