三途の川のお茶屋さん
間近にある十夜の瞳が、私だけを映していた。
「幸子の言葉が、まさに俺の心の代弁だ。俺はこの地で幸子と共にある事が望みだ。地位も中央での要職も、俺にとっては取るに足らない些末だ」
「十夜っ……!」
煌めく紫色の瞳が、滲む涙で霞む。
「幸子、幸子が無事でよかった!!」
けれど次の瞬間、私は十夜の懐に、視界ごとすっぽりと閉じ込められていた。
「十夜! 十夜っ!!」
ぎゅうぎゅうに抱き締められて、十夜の鼓動も体温も、その想いまでをも肌で感じた。
「幸子のいない『ほほえみ茶屋』を見て生きた心地がしなかった! 身が切られる思いだった! 俺はもう、二度と幸子を離さない!!」
胸に、歓喜が湧き上がる。歓喜は、奔流になって全身を駆け巡る。