三途の川のお茶屋さん




その日、珍しく『ほほえみ茶屋』は閑古鳥が鳴いていた。

けれどそれは『ほほえみ茶屋』だけではなかったようで……。


今日の第一便の出航時刻が迫っていた。けれど船頭の懸人さんがまだ、乗船せず埠頭に立ったままだった。

「懸人さん? どうされたんですか?」

これはそうそうある事じゃない。思わず懸人さんに声を掛けていた。

「ああ、乗船客がまだ一人もいないんだ」

長く船頭を務める懸人さんにとっても、これは珍しい事のようだった。

「え? 船もお客様がいないんですね!」

懸人さんは、手元の時計を食い入るように見つめていた。

「……出航時刻だ」

そうして低く、呟いた。



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