三途の川のお茶屋さん
「……おい、うちに来いよ」
!!
頭上から掛かる声に、驚いて顔を上げた。
すると、消えたはずの十夜が私を覗き込んでいた。
「よくよく考えたら、お前に風邪でも引かれちゃ俺が管理責任問われちまう。仕方ないからお前が船に乗るまで、俺の屋敷に居候させてやるよ。ほら」
ほら、といって差し出された手を注視して、首を捻った。
……一度死んだ私も、風邪を引くんだろうか?
「お、お願いします!」
けれど疑問は口に出さず、私は差し出された十夜の手を力強く掴んだ。
「……ん」
十夜はぶっきらぼうに頷いた。
温かく大きな十夜の手が、私の手をギュッと握り返した。心細さはもう、なかった。