御曹司は恋の音色にとらわれる
「悪い男だったら、すぐ言うんだよ、この店出入り禁止にするからね」

マスターのぶっそうな言葉に、

「大丈夫ですよ」

と明るい声で答え、普段着に着替える。

「悪いやつならパンチお見舞いしてやりますよ」

中條さんの言葉に、嬉しい以上に、
ピアノを弾く大切な手に、何かあったら大変と心配してしまう。

「大丈夫ですよ」

同じ言葉を再び繰り返し、
フィッティングルームから姿を現す。

明るい顔をしているであろう私に、それ以上何も言わず、

「幸せになるんだよ~」

と送り出してくれた。
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