想い花をキミに
「さあね。まあでも諦めるなら今のうちだよ。どーせあんな男、あんたには似合わないさ。高望みはやめるんだね。」

と言い残して私の部屋から出て行った。
高望み……?隼太を選んだことが高望みだとでもいうの?
意味の分からない私は、あの人がさっきまで寄りかかっていたドアを睨むことしかできなかった。


それからまた、私の息の詰まりそうな生活が始まった。

あの人が酒に酔って帰ってくる音をドア越しに耳を澄ませて耐える日々。だけど今は絶対にドアが開かないように箪笥を置いて対策している。

でもあの人は以前のように酔っても私の所には来なくなって、それがまた不気味だった。

何を考えているのかさっぱり分からない。

それでもいつかまた絶対来ると思うから、私はこの防御を解くわけにはいかないの。

それから数日して、学校から帰宅した私は珍しく夕方から家にいたあの人と鉢合わせてしまった。
しかも運が悪いことにあの人はまた酒に酔っていて、

「ひっさしぶり」

と笑って私の頬を思い切りビンタした。
ビンタされた弾みで身体がよろめき壁に激突する。
唇が切れて鉄の味がした。

「あんた最近閉じこもって私をさけてたでしょ。生意気な。」

とその人は私を蔑むように見下ろして笑っていた。
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