想い花をキミに
帰宅した私は部屋に入るとドアを思いっきり閉めた。

悔しかった。なんとなく負けた気がしたの。
私が知らなかった彼をあの先輩は知っていたってことがすごく悔しい。

胃のあたりがキリキリと痛みだして、思わずその場にうずくまった。

帰りは隼太に見つからないように顔を伏せながら店を出てきた。
幸い忙しいせいで隼太は私に気づいていなかった。

痛みに耐えながら顔を上げると、床に置いてあったあの本タイトルが目に入った。

"涙色の恋"

このヒロインもきっと、今の私みたいに次々浮かんでくる不安な気持ちと戦っていたんだね。
だからあんなに泣いてたんだ。
人を好きになるのって辛いんだね。
ずっと幸せな気持ちでいられるわけじゃないから尚更辛い。

だけど諦める訳にはいかないの。

私は俯いていた顔をあげると、誰もいない場所に向かって呟いた。
「私は負けない」って。
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