別のお話。
立ち止まっていた俺を海が心配そうに見上げている。
「ごめん、立ちくらみ」
「大丈夫?早くご飯食べな?栄養つけないと」
「海ちゃんはお兄ちゃんっ子なんだね。愛だね。愛」
幽霊には取り憑いた相手の近くにいなきゃいけないルールでもあるんだろうか。
それともシヅキが生前よほどの自由人だったのか。
たぶん後者だろう。
勝手にリビングに入り込むシヅキを見てそう思った。
「春兄おかえり」
「ただいま。空も起きてるのか」