別のお話。
「ずっとそこにいたのか?」
夕食を食べて風呂に入って、歯を磨いてから部屋に戻ると出ていった時のまま、ベッドに大の字になってシヅキは窓から空を見上げていた。
「おかえり」
「ふっ、ただいま」
俺の部屋なのにシヅキがそこにいるのが当たり前になっていて、シヅキは「おかえり」と、俺は「ただいま」と言っている。
そのことがとてもおかしくて俺はつい笑ってしまった。
「何か面白いことあった?」
「だってさ。ここ、俺の部屋」
「うん?」
「なのに『おかえり』とか『ただいま』とか、なんか笑える」