別のお話。
「可愛いね。まだ咲いてる花があるんだねー」
凪は嬉しそうにそう言ったけど、俺にはその気持ちは分からなかった。
生い茂る緑の中、一つだけ取り残されたそれはひどく窮屈そうで凪みたいには見れなかった。
自転車で凪のペースに合わせながら緑の中を走る。
その間も凪の話は続いていて、それをBGMに進んでいく。
大学に付属されたベージュの建物が見えてくる頃には俺や凪と同じ紺のブレザーを着た学生が道を埋めていた。
いつもの朝のいつもの光景。
隣に凪が並走しているのも、まあ大体いつものことだ。
「先輩!」
隣よりもほんの少しだけ後ろから凪の声が響く。