爽やかくんの為せるワザ



白色と茶色の可愛らしい小さな箱。

羽水くんはそれを私に差し出してきた。


私は両手でその箱を受け取る。



……な、何?お礼?

この前って……。





「それミルクチョコ。あの時牛乳パックくれたし、ミルク系が好きかなと思って」





爽やかに微笑む羽水くんに私はハッとする。



〝この前〟って、やっぱりあのビンタされた時か……!


お礼って……牛乳パックのお礼がこんな高価そうな物!?





「ま、待って!私こんな良い物貰えるようなことしてないよ!?」


「あれ、ミルクチョコ好きじゃなかった?」


「…いや、ミルクチョコは大好きだけど!」


「お、それなら良かった。
俺にとってはそのチョコあげたくなるくらい嬉しかったんだよ。

……落ち込んでたし、成瀬さんの優しさに救われた気がしたんだ」





羽水くんはそう笑って、またジュースを入れ始めた。



……そうだったんだ。

羽水くんにとっては、特になんでもないような出来事だったんじゃないかとか思ってたけど。


そんな風に思ってくれてたなんて……。



あの時声掛けて……良かった……。





「ありがとう羽水くんっ。大事に食べるね」


「うん。こちらこそ、本当にありがとうね」





羽水くんの笑顔が身に沁みる。

あの時の切なそうな表情はもうなかった。



……なんて優しい人なんだ。



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