爽やかくんの為せるワザ

2人でずっと







   *   *   *



クリスマス当日。

私は出掛ける準備を終えたので、リビングのテーブルに座って藍くんが来るのを待っていた。


チラチラ時計を見ては、わくわくと心を踊らせる。

今日のデート、すごく楽しみだ。



と、そこでお兄ちゃんが2階から下りてくる。




「ん、珠姫はどこか行くのか?」


「うん!お兄ちゃんも愛美さんとデートでしょ?」


「ああ。……ちょっと待て、珠姫は誰と出掛けるんだ」





ギク。

私の顔は一瞬引き攣る。


お兄ちゃんは眉間にシワを寄せて明らかに警戒していた。




「……あ、藍くん」


「〝アイくん〟?……まさか文化祭の時に仲良いとか言ってたあいつか?」


「よく覚えてるね……」




なんだかんだお兄ちゃんにはまだ藍くんと付き合ったこと言えてなかったんだよね。


隠してるつもりはなかったんだけど、なかなか切り出すタイミングがなくて……。

案の定この時点でもう「駄目だ」って言われそうな雰囲気だし。


……でも、ここははっきりさせないと!




「私……藍くんと付き合ってるの!」


「……なっ」


「お兄ちゃんになんと言われようが、絶対別れないからね!」


「……」




明らかにショックを受けた様子のお兄ちゃん。

少しだけかわいそうな気もした。


……でも、私だってここは譲れないもん。




「……ならん」


「え……?」


「珠姫と付き合ってるのに、まだ俺に挨拶すらしに来てないじゃないか」


「いや、普通しないよ!結婚するわけじゃないし、ましてやお兄ちゃんだしっ」


「人様のものに手を出す覚悟があるのなら、挨拶に来るのが普通だ」




そ、そんなぁ。

藍くん今日迎えに来ちゃうのに、こんな剣幕なお兄ちゃんに会わせられないよ……。



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