爽やかくんの為せるワザ




   *   *   *




「文化祭」




リビングのテーブルに置いていた1枚のチラシを手に取って、呟くように声を漏らしたのは貴士お兄ちゃん。

きっとあれは学校から配られた文化祭のチラシだ。


お風呂から上がって、ソファでテレビを見ていた私はくるりとお兄ちゃんを振り返る。





「あ、それ今週の土曜日にあるよ。お兄ちゃんも来る?」


「珠姫のクラスは何をするんだ」


「えーと、ちょっと変わったカフェかな。女子が男装したり男子が女装したりするの」


「……ふん、珠姫がメイド服なんかを着ないなら安心だな」


「……え?なんで?」


「あんなもの着たら珠姫に言い寄ってくる男共が増えるだろ」




真顔でそんなことを言ってのけたお兄ちゃんは、そのままテーブルの椅子に腰掛けた。


……心配性だなぁ。





「彼女に聞いてみる」


「分かった!ぜひ2人で来てよ!」


「ああ」




ゆっくり頷いて、私が観ていたテレビに視線を移すお兄ちゃん。



あ、そういえば。

彼女さん、プレゼント喜んでくれたのかな。




「お兄ちゃん、ネックレスの反応どうだった?」


「ああ、喜んでたぞ。やっぱり珠姫のセンスはさすがだな」


「や、やめてよ恥ずかしい!
でもそっか、それなら良かったね!」




少しだけ嬉しそうに表情を緩ませたお兄ちゃんを見て、私もほっと安心した。


文化祭で彼女さんと会えたらいいなぁ。

なんだかんだ、全然会わないもんね。


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