待ち合わせは5分以内に
物心ついた時には私は父と2人だった。

あまり器用ではない父の料理はいつまでたってもしょっぱかった。

そんな父は口癖のように、
「次は上手に作るよ」
と言って、恥ずかしそうに頭をかいていた。

そんな父に私が笑いながら
「それ毎回言ってる」
と言い返せば父は目尻にクシャッとシワを作って笑った。

そんな父の笑顔が私は大好きだった。

不器用な父をからかってはいたけど、
料理も洗濯も、仕事をしながら家事をこなして男手1つで私を育ててくれた父を、私は心から尊敬していた。

母が居なくても辛く無かったのは、母の分まで私を愛してくれた父がいたからだ。

寂しくなった時に、隣で一緒に「父さんも寂しいよ」と抱きしめてくれた父がいたから。




そんな父がいなくなるなんて思ってもみなかった。
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