冷たいキスなら許さない
例えばこの森家のご両親から発信された結婚話を私が否定したとする。
すると、何年も恋人のふりをしてきたのだから当然疑問の声が上がる。
そこで、社長が本物の恋人の存在を明かして、さっさとそちらと結婚を決めてくれれば「実は恋人のふりをしていましたー」と笑って真実を明かせるのだろうけれど。

本命への社長のプロポーズが失敗した場合はどうだろう。
真実も明かせぬまま「結婚はしません」と押し通せばいいのか。「まだ結婚はしません」と言えばいいのか。

それでなくても恋人のふりをして早3年半。社長は今年で36才になる。
結婚はいつなんだとそれでなくても周りからせかされる毎日。社長のご両親発信のこの話を一刀両断にしてしまったら、逆に結婚に踏み切らない私たちの間にはどんな問題があるんだと邪推されるんだろうな。

この辺りで真実を明かした方がいいんじゃないだろうか。
それとも私がこのまま厚木に残って二人は別れましたと暗にアピールするとか?

・・・やっぱりどうしたらいいかなんて社長の連絡を待ってからにしよう。
帰宅してすぐに社長に電話したけれどつながらず、折り返しもないのでメールを入れておいた。
それはまだ既読にもならない。

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