冷たいキスなら許さない
「じゃあ、今の俺たちは?」

いきなり視線を私に戻して唐突に声を出す。
櫂の目が私を強く見据えている。

「あの時の未熟な俺たちじゃなくて、今現在の大人になった俺たちはどうなんだ?」

睨むような目とキュッと寄せられた眉に強い意志を感じる。

余りに強い視線にひるみそうになるけれど、言わなくちゃ。私の気持ち。

「過去はともかく、私の心はもう決まっているの」

一度背筋をのばした後、頭を下げた。
「ごめん、私もう櫂との将来は見えない。今はもう大和社長のことしか見えないから」

「やり直せるとは思えないか?」
櫂の強い視線は変わらない。
「うん」今度はしっかり櫂の顔を見る。「私がこの先一緒にいたいのは大和社長なの。」

櫂は納得できないって顔をしている。

「落ち込んでた灯里を慰めてくれたから、そばにいたのが、支えてくれたのが森さんだったからじゃないのか?優しくされて、それが愛だって勘違いしてないか?」

「違う」
即否定する。

「だって、あの人、全然優しくなかったもの」
思い出して思わず少し笑ってしまった。

ん?と櫂の眉が少しだけ八の字になって首をかしげている。

「だから、大和さんは優しくなかったの。雇ってやるけど、後は知らないって感じで。初めは勝手にやれって突き放されてたの」
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